彼女がもたらしたもの/その3

9月13日の高知行きはユキとの最後のドライブとなりました。その夜私はユキが水の底に沈んでいる夢を見ました。お別れの時が迫っているのだと思いました。二日後、三女の彼氏が挨拶にやってくるのを待たずにユキは息をひきとりました。愛媛での短い滞在時間の中で、彼は快く火葬にも立ち会ってくれました。ユキが取り持つ縁でふたりが出会ったこともそこで知りました。愛犬のお見送りという極めてプライベートな時間を共有したことで彼はいっぺんに家族になりました。その後はとんとん拍子に縁談が進み、来年の秋には挙式の運びとなりました。その日が偶然にもユキの一年目の命日にあたっていたことは不思議な縁を感じます。しばらくして深夜お父さんが廊下を飛ぶオーブのような光を見ました。おおユキか、そうかユキか、と声をかけたそうです。私は玄関を開ける際、ユキが立ち上がる時のカタカタという首輪の音が聞こえる気がします。数々の体験を通して理屈では割り切れない不思議な出来事が本当にあるのだと感動すら覚えるのです。愛犬が運んできたたくさんのしあわせに感謝しつつ。