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縄跳びロープに纏わる思い出話

昭和40年頃の話です。私は宇和島市立天神小学校の低学年でした。学校からうちの店に縄跳び用にとロープの注文がありました。父の代わりに隣家の6年生が学校までクラス分のロープを届けることになりました。荷物は重く大きくて小学生には随分と酷な頼み事でした。当時の天神小学校は国鉄宇和島駅のそばにあり、児童数も多く大勢の集団で登校していました。登校班の先頭でかどや食堂前の横断歩道を渡り始めた時、ロープを抱えた班長(お隣の男児)と私は凍結した路面で滑りふたり揃って派手にひっくり返ってしまいました。もともと無口なお兄ちゃんはますます不機嫌でしゃべらなくなり、学校に着くまでが長く感じられたのを覚えています。何故父が雪の中登校する小学生に重いロープを託したのか、きっと何がしかの事情があったのでしょう。無茶な申し出を引き受けてくれた隣家と、不承不承親の言いつけに従ったであろう息子さんの心情を思うと、古き昭和の時代の家族像が見えてくるような気がするのです。