漱石の「こころ」をどう読むか

高校時代、現代国語の教科書に「こころ」の一節が取り上げられていた。同級生である夫に聞いてみたら、遠い昔のことにも拘わらず彼もまたよく覚えていると言う。登場人物の心情を深く読み取るよう指導してくださった恩師も鬼籍に入られて久しい。還暦を過ぎた今でも本当のところを読み解くことは難しい。終始一貫する孤独と、夫婦間の「絶望的なまでの分かり合えなさ」とは実に上手い表現だと思う。高校生には重い作品を、あの頃の私達はどこまでわかっていたのだろうと思う。